園庭での鬼ごっこ中に生じた転倒事故について

平成10年12月 7日東京地裁八王子支部判決は、クラス全員で園庭で鬼ごっこをしていたところ、原告が鬼役の園児に追われて走って逃げていた際、鬼役の園児に背中を強く押されて転倒し、建物玄関前のタイルレンガ製の玄関ポーチに前額部を衝突させた事故について、①原告の両親と被告との間には幼児保育委託契約又はこれに準じる法律関係が存在し、右法律関係の付随義務として、被告は保育に当たり児童の生命、身体及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているとし、そのことは厚生省令である児童福祉施設最低基準五条二項で「児童福祉施設の 構造設備は入所している者の保健衛生及びこれらの者に対する危害防止に十分な考慮を払って設けられなければならない。」と定めていることからも肯定されるとしました。②段差の高さが園庭から約15センチメートルあり、しかも縁止部分には角が直角で丸みのない、通常のレンガより更に硬い焼過赤レンガが用いられていて、園児が転ぶなどして縁止部分にぶつかった場合には、負傷するおそれがあり、ぶつかり方によっては重大な負傷事故が発生する可能性もあり、保育園の児童は、いまだ危険状態に対する判断能力や適応能力 が十分ではないため、保育園の保母から一定の注意を受けていたとしても、そのような指導に従わなかったり、あるいは遊びに夢中になるうちにそのような注意を失念したり、危険性の認識を欠くなどして、危険な場所に不用意に近づく児童もいないとは限らないのであって、保育所の設置に当たっては、このような園児の行動様式も考慮して、安全な構造、設備を選択すべきであり、園児が園庭や玄関前のポーチで転 び、その結果園庭、玄関前のポーチ、その縁止部分等に体の一部をぶつけることは必ずしも珍しいことではなく、むしろ当然予想されることであるから、これらの構造 、設備はそのような場合でも些少の打撲傷等は格別、重大な負傷を生じないような形状、材質でなければならないとして、保育園を運営する市に対し損害賠償を命じました。