園児同士の偶発的・瞬時の衝突事故と園の責任について

松山地裁平成9年4月23日判決(判タ967号203頁)は、被告経営の幼稚園において生じた,4歳児がほかの園児と衝突し,眼球瘢痕や視力低下などの後遺症を残した事故につき,安全配慮義務違反が争われた事案において「心身共に未熟な幼稚園児の教育、監護に当たる被告としては、担当教員において、可能な限り園内における園児の行動を見守り、危険な行動に及ぶ園児に適宜注意を与えるなど、園内での事故発生を未然に防止すべき安全配慮義務を負っているというべきである。」としつつ,「これを本件についてみるに、前記認定のとおり、本件事故は、被告幼稚園の四歳児の教室内において、園児・・・と原告とがぶつかって・・・歯が原告の右眼に当たって発生した蓋然性が高いが、朝の登園後の始業時間までの自由時間帯に発生しており、園児らは教室内で着替えや積木遊びをしていて、特に騒いだり暴れたりしている様子は見られなかったものであり、担任・・・は、床の清掃をして教室外に出たところで本件事故を察知し、直ちに駆けつけて応急処置を講じたものであって、以上からすれば、本件事故は、園児同士が教室内で偶発的、かつ瞬時に衝突したことによって発生したものと認めるのが相当である。そうすると・・・教員において、前記教室内の園児の状況等からして本件事故の発生を予見し、これを未然に防止することは無理であったといわざるを得ず、被告に安全配慮義務違反があったとは認め難いという外ない。」として,請求を棄却しています。