保育室内に置かれた危険物に基づいて発生した事故について

東京地裁昭和45年5月7日判決(判例時報612号66頁)は、担任教諭が保育室の床上に置いていた熱湯を入れたやかんに4歳園児がつまづいて転倒し、流出した熱湯を浴びて、身体に熱傷を受け、熱傷性癈痕ケロイドを残した事案において、担任教諭が5才前後の幼児のいる保育室の床上に熱湯の入っているやかんを置いたことは重大な過失であるといわねばならないこと、担任教諭が園児に対しやかんに気をつけるよう注意を与えていたとしても5才前後の幼児 に対し口頭で注意を与えていただけでは、到底園児の安全を守る義務をはたしたとは解することはできないこと、広範囲の皮膚の熱傷により皮膚が着衣に密着している場合の救急措置として鋏で着衣を切り裂く等の方法により皮膚がはがれないように万全の注意を払うべきであったのに慢然と着衣を脱がせたことも重大な過失であることなどを理由に、幼稚園の運営主体に対して慰謝料などの賠償を命じました。